はじめに Prologueから第1話へ
Prologueでは、「ナフサ・ショックの双子の問題が、エネルギーの話である」というところから始めました。
ホルムズ封鎖、化石燃料70%依存、G7最低水準の再エネ比率。これらの脆弱性が、製造業にとって他人事ではなくなったという話を整理いたしました。
その続きとして、本日の第1話では、いよいよ再生可能エネルギーの「中身」に踏み込んでいきたいと思います。
太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス。これらの言葉は、製造業の方なら誰でも一度は耳にされていると思います。
ただし、「それぞれの電源が、製造業にとってどんな意味を持つのか」という問いに、即答できる方は意外と少ないのではないでしょうか。
「太陽光は昼しか発電しない、だから工場には向かない」
「風力は安定しないから、製造業では使えない」
「地熱は日本にたくさんあるはずなのに、なぜ普及しないのか」
「バイオマスはCO2が出るのに、なぜ再エネに分類されるのか」
こうした素朴な疑問に、わたし自身も最初は戸惑いました。
それぞれの電源には、独自の特性があり、独自のコスト構造があり、独自の立地制約があります。そして何より、「製造業との相性」というのが、電源ごとに大きく違うのです。
本日の第1話は、その基礎を、できるだけ平易な言葉で整理してまいります。細かい技術論よりも、「現場の判断軸」になるような視点を提供したいと思います。
第一章 5つの再エネ電源、それぞれの正体
まずは全体像から
日本の再エネは、大きく5つに分類されます。
それぞれの2023年度の発電比率と、ざっくりした特徴を、まず整理してみます。
● 太陽光発電:9.8% 昼間に発電、設置自由度が高い
● 水力発電:7.6% ベース電源として安定、ただし新規開発余地は限定的
● バイオマス発電:4.1% 燃料調達の安定性とコストが課題
● 風力発電:1.1% 日本では洋上風力に期待集中
● 地熱発電:0.3% 日本のポテンシャルは世界3位、だが普及が遅い
5つを合わせて、約22.9%。これが日本の再エネの現在地です。
太陽光発電、製造業との「相性」を冷静に見る
太陽光発電は、再エネの中でも、製造業にとって最も身近な選択肢です。
理由は単純で、「工場の屋根の上に置ける」からです。
ご存知の方も多いと思いますが、最近の事例として、DMG森精機の伊賀事業所が話題になっています。同社は2022年から3期に分けて、屋根上にオンサイトPPAを順次導入し、2025年2月から発電容量合計約13.4MWで全量供給を開始しています。これは、屋根上オンサイトPPAとしては国内最大級の規模です。
また、東洋炭素の詫間事業所では、2027年6月から、工場向けオンサイトPPAとしては国内最大級となる発電容量約20MWの稼働が予定されています。
こうした事例を見ていると、「太陽光は工場に向いているのか、向いていないのか」という二者択一の議論は、もう古いと感じます。向き不向きは、「規模」と「使い方」と「立地条件」で決まるからです。
太陽光発電の強み、3つに整理
製造業の現場目線で、太陽光発電の強みを3つに整理してみます。
第一に、発電コストが世界レベルで低下していることです。
経済産業省の発電コスト検証ワーキンググループの2025年2月とりまとめによると、2040年時点の事業用太陽光のLCOE(均等化発電原価)は7.0〜8.9円/kWhです。同じ年のLNG火力は16.0〜21.0円/kWhと試算されており、コストの優位性は今後ますます広がる見込みです。
第二に、設置場所の自由度が高いことです。
工場の屋根、駐車場のカーポート、敷地内の遊休地。発電容量の確保がしやすく、需要地(工場)と発電地が一致するため、送電ロスが小さくなります。
第三に、初期投資ゼロのPPAモデルが普及したことです。
オンサイトPPAであれば、PPA事業者が設備を所有し、需要家は発電された電気を購入するだけ。15〜20年の長期契約は必要ですが、初期投資の壁は事実上消えました。
太陽光発電の弱み、ここも本音で
一方、太陽光発電にも明確な弱みがあります。
最大の弱みは、発電が天候と時間帯に左右されることです。
晴れた日の昼間にしか発電せず、夜間や曇天時はゼロです。工場が24時間稼働している場合、太陽光だけでは到底電力需要を賄えません。
第二の弱みは、設置面積が広いことです。
1MWの太陽光発電には、概ね1〜1.5ヘクタールの土地が必要です。工場の屋根面積が限られている場合、必要な発電量を確保できないことがあります。
第三の弱みは、長期契約の制約です。
PPAの契約期間は15〜20年と長く、その期間中に工場の建て替えや移転を計画する場合、違約金が発生する可能性があります。
太陽光発電を活かすコツ、現場目線で
「では、製造業はどう太陽光を使えばいいのか」という問いに、わたしなりの答えを書いてみます。
ポイントは、3つあると思っています。
第一に、自家消費比率を最大化する設計です。
発電した電気を売電するのではなく、できる限り工場内で消費する設計が経済合理性が高くなります。工場の電力需要パターンと、太陽光の発電パターンを照らし合わせ、需要のピークと発電のピークが一致するように設計することが基本です。
第二に、蓄電池との組み合わせです。
昼間の余剰電力を蓄電池に貯めて、夕方や夜間に使う。蓄電池のコストはまだ高いものの、ピークカット効果と非常時の電源確保を考えると、検討の価値は十分にあります。
第三に、サプライチェーン要請への対応です。
RE100加盟企業からの再エネ証明要求に対応するためには、自家消費だけでなく、非化石証書や環境価値の調達も組み合わせる必要があります。
風力発電、日本では「洋上」が主戦場
風力発電は、世界的には再エネの主力です。
ヨーロッパでは陸上風力が広く普及しており、米国もテキサス州を中心に大規模な陸上風力が稼働しています。
ところが、日本の風力発電比率は1.1%と、他の再エネと比べても低水準です。なぜでしょうか。
日本で風力が普及しなかった3つの理由
第一に、陸上の適地が少ないことです。
日本は山地が多く、風況の良い平地が限られます。風車の搬入路の確保や、騒音・景観の問題で、住民の合意形成も難しい。
第二に、送電網の制約です。
風況が良い地域、たとえば北海道や東北の沿岸部は、需要地の東京から遠く、送電網の容量が不足しています。
第三に、運転維持コストが高いことです。
台風や落雷による故障リスクが高く、運転維持費が他の再エネより高くつきます。
洋上風力という新しい主戦場
こうした背景から、日本では洋上風力が次世代の主戦場として位置付けられています。
政府は2030年までに洋上風力の導入量を1,000万kWまで増やす計画を示しています。秋田県沖、千葉県銚子沖、長崎県五島沖などで、大規模な実証や商業運転が始まっています。
ただし、洋上風力にも課題があります。建設コストは陸上風力の2〜3倍、メンテナンスは船を出して行う必要があり、運転維持費も高い。そして何より、設備供給はGE、Vestas、Siemens Gamesaといった欧米メーカーがほぼ独占しており、国内サプライチェーンが未成熟です。
風力発電は、製造業の「直接の選択肢」というより、「電力市場全体の脱炭素を支える基幹電源」という位置付けで考えるのが現実的です。
地熱発電、日本のポテンシャル世界3位の謎
地熱発電は、日本のエネルギー議論の中で、もっとも「もったいない」と言われる電源です。
日本は、米国・インドネシアに次ぐ世界第3位の地熱資源量を持っています。理論上、原発20基分以上の発電が可能とされています。
ところが、現在の地熱発電比率はわずか0.3%。なぜここまで普及が進まないのでしょうか。
地熱が伸びない3つの理由
第一に、開発リードタイムが長いことです。
資源調査から商業運転まで、10年以上かかるのが一般的です。投資判断のハードルが高い。
第二に、立地が国立公園と重なることです。
日本の地熱資源の8割は、国立公園・国定公園の中にあります。環境省の規制で、開発に大きな制約があります。
第三に、温泉地との合意形成です。
地熱開発は、地下から熱水を汲み上げるため、近隣の温泉への影響が懸念されます。温泉地との利害調整は、長く険しい道のりです。
地熱の真価、ベース電源としての安定性
それでも、地熱発電には他の再エネにない大きな強みがあります。それは、ベース電源としての安定性です。
太陽光は昼間しか発電しない、風力は風次第。これに対し、地熱は24時間365日、ほぼ一定の出力で発電できます。設備利用率は70〜80%と、火力発電並み、原子力発電に匹敵します。
製造業にとって、地熱発電は「直接調達が難しい電源」ですが、電力市場全体の脱炭素化を支える、極めて重要なベース電源です。この点は、後の話で詳しく取り上げる予定です。
水力発電、日本の隠れた財産
水力発電は、日本の再エネの中で、もっとも歴史が長い電源です。
明治時代から発電が始まっており、戦後の高度成長期には全電源の半分以上を担っていた時期もありました。今でも、再エネの中では太陽光に次ぐ7.6%の比率を維持しています。
水力発電の強み
第一に、ベース電源としての安定性です。
地熱と並んで、水力は太陽光や風力のような間欠性がありません。設備利用率も40〜60%と、再エネの中では高い水準です。
第二に、揚水発電による調整力です。
余剰電力で水を高所に汲み上げ、需要時に落として発電する揚水発電は、巨大な蓄電池として機能します。再エネ導入が進む中で、揚水発電の重要性は再評価されています。
第三に、長寿命です。
水力発電所の設計寿命は40〜60年。適切なメンテナンスを行えば、100年以上稼働しているダムもあります。
水力発電の弱み
ただし、水力発電には大きな制約があります。
最大の弱みは、新規大型開発の余地が少ないことです。
日本では、ほぼすべての主要河川にダムが建設済みで、新規の大型水力発電所を建設できる場所が限られています。
近年は、農業用水路や上下水道に小水力発電を設置する動きが進んでいますが、規模はあくまで限定的です。
製造業にとって、水力発電も「直接調達が難しい電源」です。ただし、地元自治体や電力会社との連携で、水力由来の非化石証書を調達する選択肢はあります。
バイオマス発電、「CO2は出るが再エネ」のからくり
バイオマス発電は、5つの再エネの中で、もっとも誤解されがちな電源です。
「CO2を出すのに、なぜ再エネに分類されるのか」という疑問は、ごもっともだと思います。答えは、「カーボンニュートラル」という考え方にあります。
バイオマスがカーボンニュートラルである理屈
植物は、成長の過程で大気中のCO2を吸収しています。
そのバイオマスを燃やしてCO2を排出しても、再び植林して成長させれば、同じ量のCO2が吸収される。
このサイクルが循環している限り、大気中のCO2総量は増えない。これが、バイオマス発電がカーボンニュートラルとされる理屈です。
ただし、ここに大きな落とし穴があります。
バイオマスの実態、輸入燃料への依存
日本のバイオマス発電の燃料の多くは、輸入木質ペレットや輸入PKS(パーム椰子殻)です。東南アジアやカナダから、船で運ばれてきます。
ここで疑問が生じます。
● 第一に、輸送のCO2。船で運ぶ過程で、相当量のCO2が排出されます。
● 第二に、森林伐採のCO2。原料の供給地で、持続可能な森林管理が行われているか、検証が難しい。
● 第三に、燃料コスト。輸入燃料の価格変動リスクが大きく、為替の影響も受けやすい。
「バイオマス発電は、本当にカーボンニュートラルなのか」という議論は、現在も国際的に続いています。
バイオマスの活かしどころ
それでも、バイオマス発電には、一定の活かしどころがあります。
第一に、国内未利用材の活用です。
間伐材、林地残材、製材所の端材など、国内で発生する木質バイオマスを使えば、輸送のCO2と燃料コストの問題を回避できます。
第二に、産業廃棄物の有効活用です。
食品工場の残渣、畜産糞尿、下水汚泥などをメタン発酵させて発電する小規模分散型のバイオガス発電は、廃棄物処理と発電を両立できます。
第三に、ベース電源としての性質です。
バイオマスは燃料があれば24時間発電でき、太陽光・風力の間欠性を補う電源として機能します。
製造業にとって、バイオマス発電は、「自社の廃棄物を活用できる場合」に検討する価値があります。食品工場、紙パルプ工場、木材加工工場など、廃棄物が安定的に発生する業種では、有力な選択肢になります。
第二章 間欠性電源と製造業の相性、本音で答える
ここからは、もっとも実務的で、もっとも誤解されがちな問いに踏み込みます。
「太陽光や風力のような間欠性電源は、製造業に向くのか、向かないのか」
この問いに、できるだけ正直にお答えしたいと思います。
結論から、3つの軸で考える
まず、結論から書いてしまいます。
間欠性電源と製造業の相性は、「業種」「規模」「目的」の3つの軸で判断すべきです。
業種の軸、「24時間連続稼働かどうか」
化学工場、製鉄所、製紙工場のように、24時間365日連続稼働が前提の業種では、太陽光単独での電力供給は不可能です。これらの業種では、太陽光は「電力コストの一部削減」と「再エネ証明の獲得」が主な目的になります。
一方、機械加工、組立工場、食品工場のように、日中操業が中心の業種では、太陽光と工場の電力需要パターンが一致しやすい。自家消費比率を高めやすく、経済合理性も高くなります。
規模の軸、「工場の電力需要規模と発電容量のバランス」
工場の年間電力消費が500MWh規模であれば、屋根上に500kW〜1MWの太陽光を置けば、電力消費の20〜30%を再エネで賄える計算です。
工場の年間電力消費が10,000MWh規模となると、屋根上だけでは到底足りません。オフサイトPPAやコーポレートPPAとの組み合わせが必要になります。
目的の軸、「コスト削減か、CO2削減か、レジリエンスか」
目的が「電力コストの削減」であれば、自家消費型太陽光が最も即効性があります。
目的が「CO2削減」「サプライチェーン対応」であれば、調達できる電源の範囲が広がります。再エネ比率の高い小売電気事業者との契約、非化石証書の購入なども選択肢に入ります。
目的が「レジリエンス(災害時の電源確保)」であれば、太陽光と蓄電池の組み合わせが最も実用的です。
間欠性を「吸収する」3つの技術
間欠性電源を製造業で使いこなすには、変動を吸収する技術が必要です。
ここでは、現場で実際に使われている3つの技術を紹介します。
蓄電池、「貯めて使う」の現実
蓄電池は、最も直感的な解決策です。昼間に発電した余剰電力を蓄電池に貯めて、夕方や夜間に使う。
ただし、蓄電池のコストは依然として高めです。リチウムイオン電池の容量当たり単価は、ここ10年で大幅に低下したものの、製造業での導入はまだ「補助金活用」が前提のケースが多い状況です。
蓄電池のコスト低減と性能向上は今後も続きますが、現時点では「ピークカット」「非常時電源」「需給調整市場への参加」といった目的を組み合わせて、複合的な経済効果を狙う設計が必要です。
デマンドレスポンス、「使い方を合わせる」アプローチ
デマンドレスポンスは、発電量に合わせて、電力需要を調整するアプローチです。
太陽光が発電している昼間に、できるだけ電力消費を集中させる。発電が少ない夕方や夜間は、電力消費を抑える。
製造業では、生産スケジュールの柔軟化が必要になります。鋼材の電炉、金属表面処理、空調といった、ある程度時間をシフトできる工程を、太陽光の発電パターンに合わせて運用する。
言うは易し、行うは難しの典型ですが、IoTとAIによる生産管理の進化で、徐々に実装が広がっています。
系統電力との組み合わせ、「足りない分は買う」現実解
最も現実的なのは、系統電力との組み合わせです。
太陽光で発電した分は自家消費し、足りない分は系統電力から買う。余剰が出た場合は、売電するか、蓄電池に貯める。
これは特別な技術ではなく、現在の太陽光発電の標準的な使い方です。
ポイントは、「太陽光をゼロからフルに使う」ではなく、「電力コスト全体を最適化する」という発想に切り替えることです。
「再エネだけで工場を動かす」は現実的か
ここで、踏み込んだ議論をしてみたいと思います。
「2050年カーボンニュートラル」を達成するためには、最終的には「再エネ100%の工場」が目標になります。これは、技術的に可能なのでしょうか。
正直に申し上げます。現時点では、極めて難しいと考えています。
● 第一に、太陽光・風力の間欠性を完全に吸収する蓄電池技術は、まだ商業ベースでは確立していません。
● 第二に、地熱・水力のようなベース電源は、立地制約が大きく、新規開発が進みません。
● 第三に、グリーン水素・グリーンアンモニアといった「再エネ由来の燃料」は、まだ実証段階です。
ただし、これは「諦めるべき」という意味ではありません。
重要なのは、段階的に再エネ比率を高めていく道筋を、今から設計することだと思います。
「20%」「40%」「60%」と、現実的なマイルストーンを設定し、技術の進展と政策の動向を見ながら、計画を更新していく。これが、製造業にとって最も実用的なアプローチではないでしょうか。
第三章 現場目線、5つの電源を「製造業の視点」で再評価する
最後に、5つの電源を、製造業の視点で改めて評価してみます。
これは、絶対的なランキングではなく、「業種・規模・目的による相対評価」だと考えてください。
評価軸の設定
評価軸は、5つです。
● コスト 発電コスト、設置・運用コスト
● 安定性 設備利用率、間欠性
● 設置自由度 工場敷地内・近隣で調達できるか
● CO2削減効果 ライフサイクル全体での削減量
● 将来性 今後5〜10年の伸びしろ
それぞれを、製造業の視点で5段階評価してみます。
太陽光発電、製造業との相性は「◎」
● コスト:◎(2040年LCOE 7.0〜8.9円/kWhと最安水準)
● 安定性:△(昼間限定、天候依存)
● 設置自由度:◎(屋根、敷地、駐車場)
● CO2削減効果:○(ライフサイクル全体で大幅削減)
● 将来性:◎(PPA市場拡大、蓄電池との連携進化)
総合評価:製造業がもっとも導入しやすい再エネ。まず屋根上から検討すべき
風力発電、製造業との相性は「△」
● コスト:○(洋上風力は陸上の2〜3倍)
● 安定性:△(風況依存)
● 設置自由度:×(適地が限定、騒音・景観問題)
● CO2削減効果:◎
● 将来性:○(洋上風力の本格化)
総合評価:直接調達は困難。系統電力経由でのアクセスが現実的
地熱発電、製造業との相性は「△」
● コスト:○(建設費高いが運転費安)
● 安定性:◎(24時間安定)
● 設置自由度:×(立地制約極大)
● CO2削減効果:◎
● 将来性:△(規制緩和次第)
総合評価:潜在力大だが、当面は系統電力の脱炭素化を支える電源
水力発電、製造業との相性は「○」
● コスト:○(既存ダムは安、新規開発は高)
● 安定性:◎(揚水含めベース電源)
● 設置自由度:×(新規大型は困難、小水力に余地)
● CO2削減効果:◎
● 将来性:△(既存ストックの有効活用)
総合評価:既存水力の非化石価値を活用するのが現実的
バイオマス発電、製造業との相性は「○〜△」
● コスト:×〜△(輸入燃料は高、国内未利用材は中)
● 安定性:◎(24時間燃料次第)
● 設置自由度:○(業種次第)
● CO2削減効果:△〜○(燃料調達次第)
● 将来性:△(持続可能性議論次第)
総合評価:自社廃棄物を活用できる業種では有力。輸入燃料前提なら慎重
第四章 現場からの3つの問いかけ
第1話を終えるにあたって、製造業の現場で働くみなさんに、3つの問いを投げかけてみたいと思います。
問い① 「あなたの工場の屋根、何メガワット置けますか」
工場の屋根は、もっとも分かりやすい再エネの「資源」です。
1ヘクタール(10,000㎡)の屋根面積があれば、概ね1MWの太陽光が設置可能です。
あなたの工場の屋根面積を知っていますか。何MW置けるか、計算したことがありますか。
これは、再エネの第一歩です。屋根を使わない手はありません。
問い② 「あなたの工場の電力需要パターン、把握していますか」
太陽光の自家消費比率を高めるには、工場の電力需要パターンを正確に把握する必要があります。時間帯別、曜日別、季節別。需要のピークと、太陽光の発電パターンが、どこで重なるのか。
電力需要のスマートメーターのデータがあれば、簡単に分析できます。
「うちの工場は、昼休みに電力消費が落ちる」「土日は3割減る」、こうした把握が、最適な発電容量設計の出発点です。
問い③ 「あなたの工場の廃棄物、エネルギーになりませんか」
食品工場の残渣、製紙工場の黒液、木材加工工場の端材。これらは、捨てるとコストですが、エネルギーとして活用すれば収益源になります。
バイオマス発電が必ずしも最適解とは限りませんが、「自社の廃棄物がエネルギーになるかもしれない」という視点を、一度持ってみることをお勧めします。
おわりに 次回予告
次回の第2話では、「日本の再エネの現在地、G7最低水準から抜け出せるか」というテーマで、政策と現実のギャップを掘り下げてまいります。
第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)では、2040年の再エネ比率を40〜50%に引き上げる目標が示されました。
これは現状の22.9%から、わずか15年で2倍以上に引き上げるという、極めて野心的な目標です。
この目標は、本当に達成できるのか。GX-ETSは機能するのか。製造業の現場には、何が求められるのか。
次回も、現場目線で、本音と建前を整理してまいります。
ホルムズ封鎖の影が長く伸びる2026年5月、再エネの基礎を踏まえて、次は日本の現在地を見つめ直しましょう。
それでは、次回でお会いしましょう。
引用文献・参考資料
● 経済産業省・資源エネルギー庁「発電コスト検証ワーキンググループ」(2025年2月とりまとめ)、第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)
● 資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの主力電源化について」(2025年11月12日資料)
● 資源エネルギー庁「令和5年度(2023年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(速報)」(2025年4月公表)
● テス・エンジニアリング株式会社「オンサイトPPAにおける直近の市場動向」(2025年6月10日)
● DMG森精機伊賀事業所オンサイトPPA導入事例(発電容量合計約13.4MW、2025年2月全量供給開始)
● 東洋炭素詫間事業所オンサイトPPA導入予定事例(約20MW、2027年6月開始予定)
● アリアケジャパン九州工場オンサイトPPA導入事例(屋根+カーポート約2.6MW)
● 関西電力、伊藤忠エネクス、オムロン、エネがえる等、各社PPA関連公開情報
● CARBONIX MEDIA「日本のエネルギー割合(2025年版)」、ScopeX「日本の発電割合(2025年最新)」
● IEA「World Energy Outlook 2024」(地熱・水力・風力ポテンシャル国際比較)
著者プロフィール
畠山 達彦 株式会社DCTA 代表取締役
大手ケミカルHDの事業会社にて機能性樹脂事業の責任者を務め、素材開発・加工技術・工場設計・生産管理に至るバリューチェーン全体の意思決定を担う。30カ国以上の事業運営を統括した後、2014年11月に独立し株式会社DCTAを設立。製造業の環境規制対応(PFAS・EU CRA等)、IoT/AI/デジタルツインを活用したスマートファクトリー構築、アジアでの資源循環ビジネス開発を中心としたコンサルティングを展開。湘南・横浜を拠点に、東南アジア・中東・インド・欧州・米国で活動中。NewsPicks EXPERT AWARD 2024 ベストフラッシュオピニオン賞2024/2025年連続受賞。
会社URL https://www.dctainc.com/
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